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【インタビュー】脇坂 千恵


エンクロスのWebページでは、市民活動者の背景や思いについてご紹介していきます。最初のインタビューは、延岡で地域づくりの活動をする脇坂千恵さんのインタビューをお届けします。

―延岡市内の様々な方々とお会いしてきましたが、脇坂さんは若手で勢いあって、先輩たちとも渡り合っていると思っています。今後の延岡の市民活動を考えるうえで、一番モデル人材だなというのがあって、最初のインタビューをお願いしたいと思いました。こういう人がいるんだというのが、若い人にも伝わればいいなと思っています。では、まずご経歴からお伺いしていきたいと思います。

脇坂:脇坂千恵です。よろしくおねがいします。延岡生まれ延岡育ち。高校まで延岡で、大学は宮崎市内の公立大学に通っていました。延岡から鈍行で、片道2時間半かけて。

―大学時代に若鮎レディ(延岡市観光協会の観光レディ)になったんですよね?

脇坂:そうです。大学3年の時でした。大学に観光レディとかやっている先輩が多くて。日南サンフレッシュレディとか。宮崎のサンシャインレディとか。その先輩たちがきれいで、今、女子アナとかやっているんです。そういう人たちの影響で、延岡にもないかなと思って調べたら、あったんです。延岡がずっと好きで、そういうことやっている先輩達もいて、面白そうだなと。書類審査やってから面接受けました。10人くらい受けてたのかな。私たちの時は割と多かったと思います。
「チャームポイントはどこですか?」って聞かれて、「たいして別に美人でもなく、性格もそんなにいいわけではないんですけど、食べ物はおいしく食べられます」って言って笑いを取って受かりました(笑)。懐かしい。


若鮎レディ時代の活動風景

―それで観光レディやってみたらどうでした?

脇坂:イライラして(笑)。夢を見すぎていたのかもしれない。もっとこうしたい、とかいろんなアイディアが出てきてしまった。若鮎レディは現場でたくさん市の職員とか、観光協会のメンバーが動いているのに、「若鮎レディはそこで待っててください」みたいな…。

―扱いがよすぎたんですね。もっと現場に入りたかったんですね。

脇坂:いや、それやりたいんだけど、みたいな。現場では基本的に控室に通されて、そこで待機みたいな感じでした。そういうのが面白くないなと思ってしまって…。でも「若鮎は待っていていいよ」って言われたから、(何もできない自分に)イライラが募ってしまって。その溜まったフラストレーションをぶつけた先が、延岡発祥チキン南蛮党の活動でした。

―チキン南蛮党には若鮎レディをやっているときに入ったんですか?

脇坂:観光協会に南蛮党の担当のような方がいて、その人が当時の若鮎の担当をされていたので、「興味あるなら行ってみない?」ってところから始まり。行ったら、面白い!みたいな。気づけばそこから、5、6年くらい、続いています。

―チキン南蛮党自体は何年も前からあったのでしょうか?

脇坂:2009年からです。延岡市の観光振興ビジョンという延岡の観光戦略を考える委員会があって。そこには市の観光戦略課や、まちづくりの有識者・先輩方がメンバーでいて、食をツールに観光を売っていこうと立ち上がった団体です。今は発足した当時のメンバーは卒業され、いらっしゃいません。

―チキン南蛮党は組織としては何になるんですか?

脇坂:フツーの市民団体、ボランティア団体。自分たちで出店して、自分たちで活動費稼いで、自分たちで事業をやるという完全に独立した団体で…。宮崎県でも数少ない、もしくは唯一くらい自分たちで稼いで、いろんな事業展開しているという団体です。補助金にはめったに頼らない。ただ必要に応じて使う場面もありますが。だから、突拍子もないお馬鹿なこともしがらみなくやれるっていうのが利点です。

―やりやすいところは?

脇坂:スピードが全然。「やりたい、このタイミングで」ってなったときに、自分たちのお金で、自分たちのタイミングでスピード感もってやれるところ。
一番面白いのは、選挙カー。「延岡発祥チキン南蛮党、7月8日チキン南蛮の日です!」っていう街宣活動をやりました。「チキン南蛮党です、よろしくお願いします」って言いながら市内を回るという。そんなのも楽しくやっちゃって(笑)。そういうこともできる。

―自由ですね(笑)。自由はエンクロスのテーマにもなってるんです。

脇坂:うん、自由ですね。比較的。だからといって、行政の市や県と距離があるわけでもなく。昨日まで行っていた福岡のグルメイベントも、県の推薦枠で出店していて、ステージでPRまでさせて頂きました。売上はもちろん活動資金に充てます。

―県とか市は、観光振興という点でサポートしてくれますか?

脇坂:頼らないとサポートはないですね。南蛮党はある程度、自立できているので、基本的には頼らなくてもいろんなことができる団体ではあるけれども、そこはしっかり連携をとっていくべきと思います。頼らずとも連携は大切だよねと、去年、県庁にご挨拶に行ったりはしています。だから今回みたいに推薦でお願いします、って話に繋がっていると思います。県とか市が利用してくれればいいなと。


B1グランプリでの延岡発祥チキン南蛮党活動風景

―自立がキーワードですね。

脇坂:補助金を使うのが悪いわけではないけれど、自分たちで稼いで活動していく…自立できていないと継続はなかなか難しいです。

―南蛮党のミッションやゴールなどはあるんでしょうか?

脇坂:元々は観光というところから始まっていて、観光客に来てもらわなければいけない。食を通して、延岡を知ってもらって、「その美味しい食べ物を食べたいから延岡に行きたい」っていう発想に結びつく活動にしなくてはならないと思っています。食だけではなく、お酒の延岡三蔵だったり、アウトドア観光とかと連携を取りつつ、一人でも多く観光者が来てくれれば、それがゴールです。と言っているけど、なかなかなかなか…。

―チキン南蛮党ができたぐらいからか、全国でチキン南蛮が普通にランチメニューに並ぶ割合が増えたように思います。それは南蛮党のPR力から来てるかなという気がしてますが、いかがでしょうか?

脇坂:B1グランプリでB級グルメの人気に火がついたのが数年前で。B1グランプリに南蛮党も3~4年出ていました。そこで知名度は上がりましたが、今は脱退して、そこからチキン南蛮だけではなく、延岡の食・素材というところを全体的にプッシュしていける団体になろうという感じです。

―もう全国的にチキン南蛮は市民権得てますよね。10年前にはここまで浸透してなかったですから、それはすごいことだと思います。

脇坂:ここ数年、延岡市内の小中学校で7月8日のチキン南蛮の日にチキン南蛮が給食でも出るようになって、だいぶ定着するようになりました。

―脇坂さん自身、チキン南蛮党の活動から広がったことはありますか?

脇坂:南蛮党で、市職員や地域の濃いメンバーと繋がったので、延岡でイベントがある場合、実行委員会が立ち上がる前に連絡が来るようになりました。TGC(東京ガールズコレクションin延岡)が初の野外開催で延岡の西階総合運動公園であったときに、市の職員から連絡が来ました。大学3年の秋でした。


東京ガールズコレクションin延岡

―若い女性ですしね。おじさんだけだと難しい案件だし、声かかりますよね。忙しかったですか?

脇坂:一番の思い出は、イベント前日に車中泊(笑)。

―なんでですか?

脇坂:若い女の子たちが、夜中から場所取りのために入場ゲートに並び始めてしまって。で、「女の子たちだから、男だけが現場にいても対応しきれないこともあるかもしれない。女子が対応したほうがいい場合もある。お前、家近かったよな?」って呼び出されるという(笑)。
日中、ずっと準備をしていて、家に帰って、メイク落としたタイミングで呼び出し。結局、ほとんど寝ずに朝を迎え、現場回した後、次の日、若鮎レディの最後の仕事の日で(笑)。

―完全に仕事ですね(笑)。

脇坂:TGCが一番地獄でしたね。懐かしい。学生だったので、昼間、授業がないときに家で、セルフネイルやっていて、乾く前に現場に呼び出され、現場作業してネイルがズタボロになる事件も起きた(笑)。

―若者に、脇坂さんのような活動をしてほしいのに、誰もやりたがらないかもしれないですね(笑)。

脇坂:ただ、そこで本気度を試されて、宮崎ひでじビールの永野社長やまちづくりセンターの福田さんなど地域の先輩方に信頼されたかもしれない。今の延岡を引っ張っているメンバーが本気度を認め、受け止めてくれて、今がある。
TGCがキッカケかもしれない。TGCによって、繋がったメンバーと今も繋がっている。そうゆう意味で、TGCは私にとって意味があったし、今では良い思い出です(笑)。

―行政主導の行事に参加されることは多いですか?

脇坂:TGC以来、参加することが増えました。エンジン01もほぼ同じメンバーでやりましたね。市民が本気でやっているので、行政も本気でやってくれなければ。そんなふうに大きなイベントをどんどん乗り越えては成長してきたという感じです。


―そのほか、自分で活動されてるじゃないですか。それは、なぜ始めたんですか?

脇坂:はい、『結び塾』をやっています。もともとは大学の時の卒論のテーマが『延岡のまちづくりにおける市民協働とは?』で。私、市職員や県職員とも仲が良くて、まちづくりのメンバーとも仲が良いんですが(笑)。現場では毎回ぶつかる行政と民間で。それはお互いの立場があるので、当たり前だとは思うんだけど、もっとうまく連携が取れないかなと、純粋に思ったんです。大学3年の時でした。
例えば、行政側が「もっと市民主導でいかないとだめでしょ」って言ってるのを聞くとイラっとして、民間、市民側から「行政は何もしてくれない」と聞くとイラっとして(笑)。私は、どちらにも頑張っている人がいることを知っているから。
もっと同じ場で話し合って、同じ土俵で勉強会したり、フラットな場で繋がってから、お互いの立場に行くほうが、うまくいくんじゃないかなっていうところから、民間と行政で同じ場で学べるとか、話せる場を作りたいと。仕事から始まると、どうしてもそれぞれの立場でしか考えられないから。
その前に行政と民間が同じ土俵で学んで、フラットな場で出会って、自分たちがそれぞれの課とか市民活動をやっていくうえで、偶然リンクしたときに、結び塾の同期がいるとか、何か関係性があればいいなと思って。
最初の頃は、「この人の話聞きたいよね」となったら、その人の話を聞きに行ったりしてていました。今の結び塾はもう少ししっかりしたもので、延岡の大御所メンバーの力を借りつつ、形にしていこうとしています。一期メンバーは完全に実験台だったんですが(笑)。


結び塾の2018年度パンフレット


エンクロスでの結び塾の風景

―一期やってみて、良かったこと、失敗したみたいなことありますか?

脇坂:良かったことは、やる気のあるメンバー同士が繋がれるということ。あと私たちもその人のやる気の本気度が図れるというか。一年やって、この人、本気だから、応援したいなと思いますし、実際に応援できますし。
悪かったのは、一期生の中でも学びたい分野がバラバラ。なので、講師の選定が難しかったっていうのと、一年通してやる気の差が出てくるので脱落者が出てくる。ということで、二期は最初からテーマを決めて、テーマの元に講師を最初から決めています。

―二期目のテーマは何ですか?

脇坂:稼ぐ地域づくり。稼ぐ、稼ぐ(笑)。稼がないと続かないから。稼ぐ地域づくりで、行政半分、民間半分の塾生募集してます!

※すでに今年度の募集は終了。

講師のメンバーは、なかなか凄いメンバーを揃えております。講師は日南市の崎田市長だったり、九州パンケーキの村岡さんだったり、高千穂でムラたびという地域資源を生かした会社を興されている方の話だったり。特別講師に宮崎ひでじビールの永野社長を迎えて、1年間、月一くらいのペースで講座をやっていきます。最後に、例えば、「稼ぐ地域づくり」というテーマで、市の1つの政策を作って、プレゼンをする。市長や議員さんがそこから一つでも拾ってくれたら、というオープンな気持ちで発表会をやろうと思っています。

―エンクロスでやってもいいんじゃないですか?

脇坂:結び塾の講座は基本オープン講座にしようと思っていて。特別講師の授業だけは塾生オンリーになりますけど。

※実際に6月の結び塾はエンクロスで開催されました。

―脇坂さんみたいな人が、もっと出てきたらいいなと思いますか?

脇坂:私、二十歳からまちづくりやっていて、どこ行っても最年少、何かの実行委員会の中でも常に最年少(笑)。そうですね。後輩欲しいです(笑)。

―どうしたら、そういう人が出てくると思いますか?

脇坂:こっちが見つけてあげるしかない。ちゃんと見つければ、いるんじゃないかって思っています。実はここに来る前、高校生からのインタビューを受けていて。それが終わった後にある子に「個人的なこと聞いていいですか?チキン南蛮の活動に一度参加してみたいんですけど、どうすればいいですか?」って質問されて。
えっ、いるじゃん、こういう子って。「いつでも連絡してきて」って名刺渡しました。自分がアンテナ張って見つけてくるのが、一番早いなと。
若い人からすると年齢が近いので、話しやすいのかなと思います。あと、私自身が憧れてもらえるような人になるのが大事なのかなと思います。私自身も学生時代レディの先輩たちに憧れたのがきっかけです。いつも一緒にお馬鹿なことを言っては、はしゃいでいる素敵なおじさまたちも、まちづくりの現場に出れば、悔しいけれど、憧れの存在(笑)。
結び塾の件も、宮崎ひでじビールの永野社長、延岡マリンサービスの高橋勝栄さんに沢山の指摘をうけながらのスタートでした。ダメ出ししてくれるのは、真剣に向き合ってくれているということ。折れそうになっても、何度でも頑張れる。6年一緒にいるんですが、まだまだあの人たちを超えられそうにないです。

―いいですね、そういうあこがれの先輩方がいるのは。

脇坂:本気でぶつかれる家族みたいになりましたね。あれ?私、結構みんなのこと大好きなんだな(笑)。

―若い世代で延岡のまちづくり関わりたい人が、なかなか出てこないですよね?

脇坂:私が大学の時に、就活もせず、まちづくりしていて、父にすごく怒られて、「それが一体お前の人生の何になるんだ。それで食っていけるわけじゃないんだぞ、わかってるのか。」って言われて。「あ、そうか、若い子ってこういうところで、心折れちゃうのか。延岡愛はあるけど、どうやってカタチにしていいかわからないし、それがどう自分が生きていく私の術になるかわからないし。」って思いました。
私の学生時代は地方創生という言葉はまだだったけど、今は宮崎大学にも地域創成学部ができたから、地域のための仕事で食べていけることが理解されつつあるので、そういうところから出てくればいいなと思っています。


―仕事としてやるのと、ボランティアとしてやるのとは違う?

脇坂:難しい!どっちが偉いとかも無いけど、自分がキツくない方向でやってもらえばいいと思っています。ただ、全部、ボランティアでしんどいと思うんだったら、全然無理しなくていいと思います。好きなことを仕事にできるのが一番。
ただ、稼ぐのが悪いとは思ってほしくなくて、ビジネスを通じて地域のためのことをやっているのに、その会社が「いや、お前たちは儲けるからいいよね」って周りから言われるような環境が嫌だなと思って。
地域づくりの講演会してくださいって言われたときに、「『地域づくり』=『綺麗な魔法の言葉』ではなく、=『ボランティア』でもなく、=『イベント』というわけでもない」っていうのは毎回、私がよく使っている文言で、「ビジネスで地域のために」っていう考えの方がいらっしゃるということだけ忘れずにいてくださいっていう。
ただ行政の方は、全部がやっぱり仕事になってくるので、さらに、そこで地元への愛情がプラスになれば、もっといい仕事ができるんじゃないかなと思います。民間的な感覚も養ってほしいっていうのもあって、同じ場で勉強できればいいなと。民間は民間で、行政は行政のスピード感があるので、行政のうまい活用の仕方とかを一緒に学ぶことでそういうところも知ってくれればいいな。
というところから発展したのが「結び塾」。これが、うまくいってくれればと思うばかりです。

―コンセプトがしっかりしてるから、うまくいきそうですけど。

脇坂:ここにたどり着くまでが長い!4年目かな。延岡ひよこクラブっていう市民協働でやる勉強会を始めて、2年。3年目で「結び塾」に挑戦して、4年目でしっかりした形での二期が始まるっていう。実質、二期が一期みたいな感じです。

―今回、エンクロスができるんですけど、「やりたいこと」「期待すること」なにかありますか? 市民報告会にも参加して頂いて、延岡の情報の集約・整理をしてほしいという話がありましたよね?

脇坂:どこに問い合わせればいいんだろう!というのが、延岡の課題で。たらい回しにされることも多く。情報がここに集まってくれたらいいな、と。しっかりとした情報が集まっている場所、それが分かりやすい延岡の窓口である駅にあるのが一番いいと思います。あとは若い子たちがワクワクできる場所というのが、一つでも増えてくれれば嬉しいかな、と。ここにいたら、誰かに会うというのが全然ありだなと思います。いやあ喜ぶでしょ、若い子たちは。こういうおしゃれな建物ができただけで。

―若い子たちって脇坂さんも若いはずだけどね(笑)。

脇坂:あとは、子連れのお母さんたちがちょっと集まれるような場所っていうのがなかなかないので。駐車場があって、時間潰せて。そういう面ではすごい期待が高いです。丁度、周りの友人たちが出産している世代なので。


―最後になりますが、何か伝えておきたいことはありますか?

脇坂:まちづくりって、なんで若い子がこんなにいないんだろう。探せばいるかなあ。参加したいって思えるような活動に出会えてないのかな。就職説明会みたいに、市民団体説明会みたいなのをやってほしいです。で行って、話聞くみたいな。
そういうの、一斉にやっちゃった方がいい気がします。
若者たちよ、延岡で一緒に頑張りましょう!(笑)

―ぜひ、そういったイベントを定期的にやりましょう。