延岡神楽の楽しみ方
2018/11/4 開催
「延岡神楽の楽しみ方」
エンクロスの日曜日の午後と言えば、学習や仕事をされる方が多い2階学習席スペースですが、11月4日(日)の午後はいつもと違う雰囲気に包まれました。
14時より学習席スペースを神楽の舞台にしつらえて、「延岡神楽の楽しみ方」を開催いたしました。
この催しは11月11日に開催された、第22回城山かぐらまつりを前に、みなさんに延岡神楽のことをより知っていただこうと企画されたものです。
今年で22回目を数える城山かぐらまつりは、平成9年度より、神楽の伝承者に発表の機会を与えるとともに、後継者の育成や地域文化の向上、地域おこしを目的に始まりました。
その城山神楽祭実行委員会から、山﨑洋一さん、黒木弘一さん、松田勝則さんにお越しいただき、実演を交えながらお話をしていただきました。
3名とも神楽の舞い手として活躍されており、舞い手さんならではのエピソードもふんだんに織り交ぜてお話をしてくださいました。
体の芯にまで響くような太鼓の音がドンドンと鳴り渡り、笛と鉦(手拍子と言うそうです)が合わさると、開演の合図です。
神楽と言えば、高千穂の夜神楽が全国的にも有名ですが、そもそも「かぐら」とは?という基本的なところからお話いただきました。
「かぐら」と言うと、今は「神楽」という漢字を書きますが、実はそれは当て字で、日本に漢字が伝来する前から「かぐら」はあったそうです。遥か古の昔から大切に伝わってきたものであることが窺い知れます。
神楽は日本固有のアニミズム信仰に基づいており、その始まりは、神様への感謝を表し、神様とともに楽しく舞うダンスエンターテインメントだったそうです。
その長い歴史の中で、神楽はその土地の風土に合わせていろいろな種類に発展してきました。延岡神楽は奈良時代に修験者によって伝えられ、出雲神楽の流れを汲むものだそうです。
ところで、現在延岡には4つの神楽があることをご存知でしたか?
山の神楽、海の神楽が2つ、そして城下町の神楽の、合わせて4つです。まさに、自然豊かな延岡ならではですね。
その中でも、城下町の神楽は御本城神楽とも呼ばれ、延岡藩には神楽担当者がおられたそうです。そのため、御本城神楽は洗練された舞です。
また、延岡神楽には、面舞いと本舞いがあり、面をつけて舞う面舞いは余興としての意味合いが強く、面をつけない舞いが本番の舞いだということもお話いただきました。
松田さんをはじめとする城山神楽祭実行委員会のみなさんに、神楽の基礎の基礎を笑いも交えつつお話していただきながら、「神楽は能や歌舞伎とは違うのか」、「どんな種類があるのか」、「日本以外にも神楽のような芸能はあるのか」といった質問に答えていただく形式で会は進んでいきます。
神楽は「踊る」のではなく「舞う」
特に印象的だったのは、神楽は「踊る」のではなく「舞う」ものであるということです。
踊りが外に向けて気持ちを発散するように動くのとは対照的に、舞は尊いものを招き入れるように内側へと手招きするような手の動きをすることが特徴です。神楽が神様とともにあることがよくわかる表現ではないでしょうか。
また全国的にも有名な高千穂神楽と、延岡神楽の違いはどこにあるのかというお話もありました。みなさんはご存知でしょうか。
高千穂神楽は33番までなのに対し、延岡神楽は37番まであります。
また、高千穂神楽とは太鼓のリズムが違うといいます。動きにおいても、高千穂神楽が曲線的な動きをするのに対し、延岡神楽は対角線的な動きが特徴です。
まだご覧になったことのない方は実際にその違いを体験してみるのも、宮崎県に住んでいるからこそできる特権ではないでしょうか。
延岡、高千穂だけにとどまらず、宮崎県は日本の中でも有数の神楽の種類を持つ珍しい土地です。宮崎県内各地の神楽を見て回るのも面白そうですね。
その他にも、「インスタ映えする神楽は?」との質問に対し、客席におられた写真家の甲斐直志さんが急遽特別ゲストとして答えてくださいました。
「自分自身が神楽を心から楽しいと思うこと」
甲斐さんは各地の神楽の写真を多く撮られており、実際に延岡神楽を撮った写真パネルも見せていただきました。
どれも迫力と臨場感に溢れる写真ばかりですが、そのような写真を撮るコツは?との問いには「自分自身が神楽を心から楽しいと思うこと」と力強くお答えいただきました。
さらに、山の神楽・海の神楽の映像も上映されました。映像に合わせて、松田さんが太鼓を鳴らしながら解説してくださるという、まさに神業ともいうべきプロの技で、会場のみなさんも引き込まれるように映像に見入っていました。
クライマックスは大峡神楽の「三番荒神」の実演です。小学5年の深田奏さんが力強く舞ってくれました。
会場のみなさんには、衣裳の着付けの段階からご覧いただき、面がどれだけ視野が狭く、舞うのが難しいかを実際の面をお手に取ってもらい、体感していただきました。昔の方は顔が小さく、面に開いている目の位置が合いにくいのだそうです。
会場で実際に手に取られた方はいかがでしたか?
「三番荒神」は、高天原より神をお招きし、幸せを与える舞です。深田さんの舞は、小学生とは思えないほど勇壮で凛々しく、会場もその動きのひとつひとつに息を呑むように見入っていました。
舞い終わると、会場からは惜しみない割れんばかりの拍手が送られ、面を外した深田さんの汗びっしょりの様子を見て、更に大きな拍手が送られました。
幼稚園の頃から神楽が大好きで、小学1年から舞い始めたという深田さん。当日は緊張もしていたそうですが、それを感じさせない貫禄の舞は、次世代を担う頼もしい舞い手さんそのものでした。
会場の雰囲気も最高潮に高まりを見せたところで、ご参加いただいたみなさんへ、御幣のプレゼントがありました。実際にお祭りで使われた神気の入ったものです。受け取られた方は大事にしてくださいね。
最後は会場のみなさんと一緒に舞台上の神様へ、二礼二拍手一礼をして会を締めくくりました。
神楽は伝統や歴史が長く、近寄りがたいと思われていた方もおられるかもしれませんが、松田さんをはじめ、城山神楽祭実行委員会のみなさんの軽妙で面白く、時に真剣なお話の数々に、すっかり魅了された1時間半でした。
延岡神楽に興味を持たれた方、また、城山かぐらまつりでの舞いを見てもう一度見たい!と思われた方は、百聞は一見に如かず。ぜひ神社での舞もご覧になってみてくださいね。
いつどこの神社で神楽の舞が行われるかについてのお問い合わせは、延岡市役所教育委員会文化課(電話:0982-22-7047)まで、お願いいたします。
参考HP:城山かぐらまつり・のべおかの神楽http://nobeokakagura.net/