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レポート

花とあそぼう

2019/8/10 開催

あなたは8月7日が何の日か、知っていますか?
ずばり、は(8)な(7)の語呂合わせで、『花の日』。覚えやすいですね。
エンクロスでも花の日にちなんで、延岡市華道連盟の主催のもと、いけばなのイベント『花とあそぼう』が行われました。

いけばなと聞くと、日本の伝統文化というイメージが強いことから、「敷居が高そう…」と思わずしり込みしてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、普段は花に触れない初心者の方や、いけばなを知らない子どもたちにこそ、気軽に見に来てほしい。そして興味を持って体験してほしい、という思いから、エンクロスでのイベントが実現したのです。
イベントは二部制となり、一部を池坊が、二部を小原流が、それぞれ指導されました。



子どもの感性を大切に、自由に花と向かい合う

華道家元池坊の夏田勝子先生は、「自由な感性を尊重したい」との想いを語ってくださいました。伝統でありながら、そこに固執しない池坊の在り方そのものです。

さっそく、テーブルの上に花を並べ、「自分の好きな花を一本取りましょう」と子どもたちに向かって呼びかけます。すると、子どもたちは迷うことなく、黄色が眩しいひまわりを手にしました。
夏田先生曰く、大人はいろいろな花を選びながら手にするけれど、子どもはあまり迷わずにはっきりとした色を選ぶことが多いのだそうです。
選んだ花を花器のオアシスの中心に挿したら、そこから、バラやスプレーカーネーション、スターチス、ガーベラ、ドラセナ、玉しだなどを次々に挿し込んでいきます。

ここでも、子どもたちに対しては、こうしてああしてといった指導は行われません。好きなように、子どもたちの感性の赴くままに作り上げられていくいけばなは、どれも違っていて面白さがありました。
活けている最中は、どの子どもたちもみんな笑顔になっていることが、とても印象的でした。
歴史の重みを感じさせるいけばなという文化を、いい意味であまり身構えずに純粋に楽しんでいる子どもたちの姿が、いけばなに対してどこか遠慮してしまう大人たちに、なにが大切なことなのか教えてくれているような気がするのでした。


初心者でも安心して楽しむことができる雰囲気

子どもたちが自由に活けている横では、大人の女性たちも談笑しながら参加していました。
一時間という手軽にチャレンジできるイベントなので、みなさんリラックスした様子。とはいえ、初めての経験なので、先生の言うことには真剣に耳を傾けています。

池坊は、すっと立ち上がったシンプルな花姿が特徴とされています。どんないけばなが出来上がるか、スタッフも楽しみに見ていましたが、子どもたちと違い、どのように活けたら美しく見えるかを一生懸命考えて、少しずつ活けているようです。気づけば、あっという間に一時間が過ぎてしまいました。
参加してくれた女性の一人に感想を聞くと、「興味はあったが始めるきっかけがなく、今回初めていけばなをやってみた。オープンな雰囲気で気後れすることなく楽しくできた」と、イベントに満足したことを教えてくれました。


完成したいけばなを手に、並んで写真を撮らせてくれた女の子たち。
元気さと可愛らしさが共存したいけばなであることに変わりはないですが、やはり個性が出ていて、どこか印象が違いますね。


現代の生活にあわせた『盛花(もりばな)』を丁寧に教える

小原流の安藤宏子先生の指導により活けたのは、ニューサイランとピンクッションという二つの花材をシンプルに使いながらも、どこか存在感を感じさせる生け花。
口の広い水盤に剣山を置き、そこに花を『盛る』ように活けていくことで、面的な広がりを強調するところに小原流の特徴があります。

実は、剣山を使用するようになったのは、小原流が始めたことなのだそう。西洋化していく中で、現代に適応する生け花をと考え生み出された小原流は、まさに近代いけばなの開拓者といえるのではないでしょうか。


さて、そんな生け花は、子どもたちにはちょっと難しく映るでしょうか?
心配をよそに、「まずは一番大きくて立派だと思う葉っぱを手に取ってね」と先生が呼びかけると、子どもたちはどれが立派かを入念に目利きしながら選び始めました。真っすぐに剣山に挿し込むと、「どう?」と得意げな顔でこちらを見てきます。

次に、「表情豊かなお花を選んでね」と言われて、さらに目を光らせる子どもたち。ここで選んだ大きな花を、斜めにして挿すという難易度の高そうなことも、あっさりとクリア。
「あれ、実は簡単なのかな?」と一瞬思ったスタッフでしたが、近くで真剣に取り組んでいる大人たちを見て、「やっぱり子どもの飲み込みは早いし思い切りがいいなぁ」と感心してしまいました。


みんなでいけばなを鑑賞して、感想を述べあう

完成したいけばなを、自分ひとりで鑑賞するのはもったいない!
イベントならではの醍醐味で、全員でひとつひとつを見て回ります。
それぞれのいけばなに、うんうんと頷いたり、隣の人と感想を述べあう様子がそこかしこで見受けられました。
同じ花材で同じように指導を受けても、少しずつ違いが出てくるのが不思議ですね。

一部でも二部でも共通していたのが、楽しそうにいけばなをしているということ。
まさに、花とあそんでいるような、そんな一時間となりました。

そのほか、延岡市華道連盟に所属する三流派(池坊・小原流・眞美生流)による作品展示も同時に開催されており、どちらも大変な好評をいただきました。
花を見て癒される、元気をもらえる。
これからも、そんな日常を過ごせたら、とても素敵なことですね。