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「アフガンに命の水を」上映会~平和について考えよう~

2023/1/14 13:00~15:00 開催

1月14日(土)、中央大ラウンジにて『「アフガンに命の水を」上映会~平和について考えよう~』が開催されました。
主催の溝口広海さんは、社会科の教諭として平和教育・人権教育に長く取り組んでこられました。退職された現在も戦争はなぜ起こるのか、どうすれば防ぐことができるのかを考え続けています。


冷戦構造の崩壊後、世界各地で政治的・経済的な分断を背景にした紛争対立が起きています。
日本の置かれた立場を明らかにすることはもちろん、紛争(戦争)の被害者および加害者にならないためにはどうすべきかを学び、考える必要があると溝口さん。テレビやインターネットの向こうで起きていることだからと無関心でいるわけにはいかないのです。
そうした思いから、今回は「アフガンに命の水を」というドキュメンタリー映像を鑑賞し、意見を交わすイベントを企画しました。

〈現実を知るところから始まる〉

みなさんはアフガニスタンという国をご存じでしょうか。
そして、アフガニスタンを支援し続けた中村哲医師をご存じでしょうか。
干ばつで荒廃した農業を復活させようと1600本もの井戸を掘り、全長25kmにも及ぶ用水路建設の指揮を執った中村哲医師。
映像を見るまえに、溝口さんからアフガニスタンという国について、中村哲医師についての説明がありました。


上映が始まると真剣な表情で画面に見入る参加者のみなさん。


異常気象による干ばつや大国の介入による無政府状態などの要因で、これまで数多くの難民を生み出してきたアフガニスタン。特に2000年頃からの厳しい干ばつはアフガニスタンの人々を苦しめてきました。
山岳医師としてパキスタンに入国した中村医師は、医療に恵まれない現実を目の当たりにします。難民キャンプでの医療を経て、アフガニスタンに診療所を設立します。そこに起こった大干ばつ。飢えや渇きは薬では癒せない、水がなければ命を維持することができないことを痛感した中村医師は、井戸を掘ることを決意します。

ただ井戸を掘ればよいのではなく、現地の人たちが自分自身の手で井戸を掘り、維持していく技術を身につけることが大事だと考えた中村医師は、国際NGO団体であるペシャワール会のメンバーたちや、現地の人たちとともに手作業で井戸を掘り続けました。その数は6年間で1600本。
しかし、地下水に頼る灌漑の限界を知り、今度は独学で土木技術を学び、用水路の建設に着手します。水だけではなく緑を増やし、学校や礼拝所といった住民の拠り所も建設する緑の大地計画には、農民、傭兵、元タリバン兵などが参加し、身分や思想を越えて協力しあいました。
幾多の困難や中断を乗り越え、これまでに灌漑が行われた面積は165000ヘクタール。60万人分の食料を生産するまでになりました。

今回上映された映像は2010年までのものでしたが、2019年アフガニスタン名誉市民となった中村医師は作業現場へ向かう道中で凶弾に倒れ、志半ばでその生涯を閉じました。今も事業は現地の人たちによって受け継がれています。


〈わたしたちにできること・平和に思いを馳せること〉

上映後参加されたみなさんで感想をシェアし、戦争を防ぐためには、そして平和であるためにはどうすればよいかを話し合いました。
10代から70代の方まで幅広い年齢層のみなさんが、それぞれの考え方やご自身と中村医師の活動との関係などを丁寧に語り合いました。



日本が国として行っている支援はあるのか、現地に行けずとも日本からわたしたちができる支援は何かといった疑問から、もっとたくさんの方にアフガニスタンのことを知ってもらうためにはどうすればよいのかといった課題、世界情勢と平和への危惧など、さまざまな視点で意見交換をしました。


参加された方からは継続的な企画を望む声もあり、まずは現実を知ること、そのうえで何ができるのかということを考えて続けていくことの必要性を感じるイベントとなりました。